Special
<インタビュー>SUPER★DRAGONが新たなフェーズへ――9人の矜持がこめられたアルバム『SUPER X』に迫る
Interview & Text:吉田可奈
Photo:筒浦奨太
結成から10周年を迎え、メジャーデビューも果たしたSUPER★DRAGON。そんな彼らのメジャー1stアルバムとなる『SUPER X』は、“ダークヒーロー”をテーマに、アグレッシブに自分たちの音楽を追求し続けた渾身作だ。コンセプチュアルでありながら、様々なジャンルをのみ込み、“スパドラ”色に染めて楽曲を作り上げた彼らに、今の心境を聞いた。
日本のカオスな音楽シーンを表現した、ミクスチャーのアルバムになった
――アルバム『SUPER X』は、より世界観の強い作品となりましたが、どのように制作されたのでしょうか。
松村和哉:今回のアルバム曲はコンペをしていないので、これまで以上に自分たちの脳みそから出てきたものが曲に投影されているんです。
古川毅:だからこそ、自分たち発信で、一緒に楽曲を作りたいクリエイターさんたちと様々な形で楽曲を制作していきました。
ジャン海渡:今回は基本的に僕、(池田)彪馬、和哉、毅の4人が制作を担当していて、それぞれが表現したいものを具現化していきました。僕は「NPC」を担当したのですが、中学生のころからずっと聴いているSnail’s Houseさんに楽曲をお願いしたんです。いつかご一緒したいとずっと思っていたので、夢が叶い、嬉しかったです。

――「NPC」はものすごく印象的かつ意外性のある曲でした。
ジャン海渡:意外性、ありますよね。Snail’s Houseさんは基本的にサントラやビートを作っている方なので、メロディと歌詞をつけるときにかなり苦戦したんです。でも、だからこそ、これまでのSUPER★DRAGONにはなかったような曲になったのですごく良かったです。
田中洸希:僕もSnail’s Houseさんが好きでずっと聴いていたので、すごく嬉しかったのですが、歌うのが本当に難しくて! 声を乗せるようなジャンルの曲ではないので、未知の挑戦になりました。実は、デモを頂いた段階と完成した段階では音の数や音質がかなり変わったので、その変化も聴いていてすごく面白かったです。レコーディング中も、音数がめちゃくちゃ多い曲なので、難しさはあれど、楽しみながら歌っていきました。
松村和哉:この曲の歌詞は、RPGが題材になっているんです。僕もRPGのキャラクターがかわいいなと思っていたことがあるので“わかるわ~”と思いました(笑)。特に『ファイナルファンタジー』のティファ・ロックハートに恋をしそうだったので、あの頃の気持ちを思い出しました(笑)。
ジャン海渡:まさかそこに繋がるとは(笑)。
――具体的な例をありがとうございます(笑)。
伊藤壮吾:僕もこの曲が大好きなんですよ。もうじき振り入れが始まるので、すごく楽しみにしています。

古川毅:僕はFIRE DRAGON from SUPER★DRAGONの「Good Times & Tan Lines」を、音楽家の宮内シンジと作れたことがすごく嬉しかったです。彼は友人であり、僕の兄貴分のような存在なんですが、ストリートで出会い仲良くなって、僕が一番信頼し敬愛する音楽家でもあって。彼とSUPER★DRAGONというボーイズグループのクリエイティブを一緒にするということはかなりの挑戦でもあったのですが、すごく有意義な時間を過ごせました。
制作は、ジャンと僕でリファレンスを投げつつ、送られてきたものに対してトップラインをセッションしながら進めていって。みんなであぁでもない、こうでもないと言いながら作っていく作業もすごく楽しかったですし、出来上がってみたら、すごくキャッチーなのに聴いたことがない楽曲になっていて、大きな達成感がありました。
――たしかに宮内さんが作っている音楽と、SUPER★DRAGONの音楽はジャンルとしては異なりますよね。
古川毅:そうなんです。なので、これまで関わることはないだろうなって思っていたんですが、自分たちが一緒に、さらに視点なども含めてベストな状態を作るとなると、彼が適任だと思ったんです。自分にとっても新境地でしたし、これをきっかけに、今作の重要なポイントでもある「Chapter」を全部担当してもらったんですよ。
僕に限らず、各々の繋がりや普段のオフの時の姿、自分たちの人間関係など各ジャンルが入り混じっている形になるので、まさに日本のカオスな音楽シーンを表現した、ミクスチャーのアルバムになったんじゃないかなと思います。

――この「Chapter」があることで、すごくワクワクする構成になっていますよね。
ジャン海渡:そうですね。会議段階からアルバムはコンセプチュアルにしたいと思っていたので、シンジさんが作ってくれた“スキット”がすごく効果的になっているんです。ラストのスキットには僕の声が入っているんですが、毅と相談しながら作りました。メンバーの意思も入れつつ、アルバム全体を仕上げてくれたので、今作は1曲目から順番通りに聴いてもらいたいです。
飯島颯:そういえば、FIRE DRAGONのセッション現場を見学しに行ったんですよ。そこで“つよジャン”が歌っている空間はすごく楽しかったですし、曲がどんどん仕上がっていく姿を見て、どんなパフォーマンスがつくのかなと想像していました。早くBLUEの前でパフォーマンスがしたいですね。

古川毅:「来てよ」と言ったら来てくれたので嬉しかったですね。まぁ、(志村)玲於は来てくれなかったんですけど。
志村玲於:いやいやいや! 行きたかったけど別仕事があったんです!
古川毅:いや来れたよね?
ジャン海渡:来ようと思えば来れたでしょ?
志村玲於:いやあの日は…。
柴崎楽:(割り込んで)まぁまぁまぁ、あとにしよう。
――最年少が止めてますよ!(笑)
古川・ジャン:後にしよう(笑)。
志村玲於:次は行きます!(大声)
一同:あはは!

ジャン海渡:そのレコーディング中に、即興で僕らがメロディを出すと、それに颯が乗ってくれたりするんですよ。「お、これはいいのかな」って揺れを見ながら体感していました(笑)。
飯島颯:自然と身体が乗れるような曲がすごく多かったんです。なのでBLUEの皆さんもきっと僕と同じ気持ちになると思います。
松村和哉:いいリスナーやな!
飯島颯:あの場でBLUEを体現していました!(笑)
古川毅:ありがたいね(笑)。

田中洸希:あと、僕は個人的に「Omaejanai」が好きです。ずっとお世話になっているYockeさんと、毅くんがプロデュースしているんですが、今までにないシャウトやスクリームを言葉に乗せて歌っていて。それを「洸希にやってほしい」と言ってもらったので、ものすごく練習して頑張りました。結果的に良い感じにできたんですが、これを再現するライブが怖いですね…(笑)。レコーディングもかなり苦戦して、何回も録りなおしたので、ライブまでに完璧にもっとできたらいいなと思っています。
ジャン海渡:でもそのシャウト、すごく良かったんですよ。
田中洸希:良かった! この曲はライブで盛り上がると思うので、楽しみですね。
ジャン海渡:これまで、洸希が担当しているところは優しいニュアンスのフレーズが多い中で、急にシャウトをするというのはギャップがあっていいなと思ったんです。
志村玲於:結成から10年を経て、この曲を作ることで、自分たちの感性やクリエイティブをしっかり消化することができたんです。僕たちは自分たちでクリエイティブをすることにあたり、“何でも屋にはならない”と考えているのですが、この曲があるおかげでスパドラの軸は変わることなく、いろんなところには手を出しつつミクスチャーというものを体現しているので、すごくいい曲になったなと思っています。
――これは古川さんがプロデュースとなりますが、どんな所を大事にしましたか?
古川毅:Back to the basicのように、SUPER★DRAGONが当初から名乗り続けているミクスチャー・ロックユニットの核となるラウドロック、2000年初頭のLIMP BIZKITやLINKIN PARKなどの音楽を2025年のアップデートのような感覚で作りました。
でも、ただのオマージュで終わるのではなく、和哉とジャンのHIP HOPだったり洸希のビートボックスだったり、いろんなアップデートをした中で、日本語で歌うインパクトを大事にしつつオルタナティブに仕上げたかったので、細部までこだわりました。

池田彪馬:僕は今回、「Hallucination of Love」を担当しました。この曲はテーマとして“重い恋愛”を掲げたんです。重さって人によって違いますよね。それがいい人もいれば、重すぎる人もいるんです。でも僕は、しっかりと思い続けること=重いものとなるのであれば、肯定的なタイプなので、そこを楽曲にして表現をしたら面白いのではと思いながら作りました。
ジャンルとしては、あくまでもノれるものにしたかったので、今回もいつもお世話になっているNameless A.K.A NLさんにお願いしました。ハウスのテンポ感を話し合いながら、儚げでありつつも、ノれる感じにしたいと思いながら作っていきました。
松村和哉:この曲のラップ歌詞は僕とジャンが書きました。ただ、「Dreamland」の時もそうだったのですが、彪馬から送られてくるテーマは、最初は何を言っているかマジでわからないんですよ!
一同:あははは!
松村和哉:とにかく抽象的で、かみ砕くのに時間がかかるんです。「またこれか!」ってなりました(笑)。

――ドリーミーな言葉選びなのかもしれないですね。
池田彪馬:そう! ドリーミーなんです! めっちゃいい言葉!
松村和哉:たしかにドリーミーだね(笑)。写実的じゃないというか、ないものを書くような感覚なんです。すごく感覚的で難しかったですね。
池田彪馬:でも、返ってくるリリックはすごく的を得ているんです。和哉が言ったように感覚的な部分が強いので、ジャンくんと和哉が書いてくれる歌詞はすごく個性が出ていて信頼もありますし、毎回素晴らしい歌詞を書いてくれるのですごく助かっています。
ジャン海渡:僕も彪馬から貰った言葉をかみ砕いて書いたんですが、彪馬からのリクエストで、テクニカルな乗り方をせず、シンプルなアプローチをしてほしいとあったんです。なので、そこを意識して、わかりやすい乗せ方をしていきました。

リリース情報
関連リンク
今後もずっとカッコいいままの曲なんだろうなって思いました

――ふたりが書くリリックの色は違うと思うのですが、池田さんはどう捉えていますか?
池田彪馬:和哉は日本語の美しさをつねに持っていて、ジャンくんは…。
松村和哉:ドリーミー?(笑)
志村玲於:ふたりともドリーミーは濃いな(笑)。
古川毅:でもたしかにふたりともドリーミーじゃない? 和哉よりもいい意味で厨二病っぽいところがあるし、それをサラッと表現するのがジャンくんはすごく上手いんですよ。
ジャン海渡:たしかに、和哉は日本語の難しい言い回しを使っていたりしますが、僕はわりとわかりやすかったり、比喩表現が多かったり…あとは、引っかかるワードは意識していますね。
池田彪馬:その個性も、SUPER★DRAGONにしかできないものなのかなと思っています。
柴崎楽:僕もこの曲、すごく好きなんですよ。ハウスっぽい感じがすごく久しぶりですし、これからどんな構成がついて、どうBLUEの前でパフォーマンスをするのかが楽しみですね。それにしてもこれだけいろんな曲をやっていても、SUPER★DRAGONというひとつの軸でまとまっているので、「すごいな、仲間たち」って思いました(笑)。
一同:あはは!
伊藤壮吾:でもわかる。これだけ多様なジャンルで1枚を作れるのは僕たちだからだと思います。新曲に関して、僕たちはパフォーマンスをまだしていないので6月からのツアーで披露することになると思います。まだリハは始まっていないのですが、ワクワクしています!
柴崎楽:あとは、個人的に思っていたのはTHUNDER DRAGON from SUPER★DRAGONの「Athena」での和哉の歌声がすごく優しいんですよ。
松村和哉:優しい⁉
柴崎楽:うん(笑)。和哉はラップをするときにガツガツと重い感じなんですが、この曲ではあまり聴くことのない、ドリーミーな…。
志村玲於:またでた! ドリーミー!(笑)
松村和哉:まぁ、俺はドリーミーな男だからね(笑)。
柴崎楽:聴いたら絶対に分かると思います! 優しいって!
松村和哉:そういえば歌割りの確認の時に、スタッフさんに「ここ、洸希?」って間違えられたんですよ。
柴崎楽:そうそう。すごく優しいので聴いてもらいたいですね。


――そこは意識したところですか?
松村和哉:いや、このボーカルディレクションは僕ではなくて、D3adStockさんがしてくれたんです。そこで引き出されたのかもしれないですね。
――そんな松村さんがプロデュースしたのはどの曲になりますか?
松村和哉:僕がプロデュースした「DOG」は、一緒に作りたいクリエイターのVLOTさんというHIP HOPのヒットメイカーの方にお願いをさせてもらいました。今の時代、ボーイズグループでHIP HOPを踏襲して楽曲を作るのは当たり前になっているんですが、現行のHIP HOPを、わかりやすさを出さずにやりたいと思ったんです。
最初はダメもとだったのですが、まさかのVLOTさんからOKを頂いて、スタジオに行きセッションをして作ったこの曲は、本当にHIP HOPが好きな人のプレイリストに入ってほしいなと思う仕上がりになったんです。
田中洸希:僕とジャンくんもVLOTさんのスタジオで一緒にセッションさせていただいたんですが、あまりに自然で友達と喋っているような感覚でレコーディングが進んだので、実はあまり詳細を覚えていなくて…(笑)。和哉からディレクションを受けたのは初めてだったので、楽しかったのは覚えているんですけどね。
松村和哉:たぶん、俺がディレクションだったから、リラックスしていたんじゃない? 結果的に、いい意味で洸希が持っているチャラさが出たんじゃないかなと思います。
志村玲於:ダンサーとしても、「DOG」はかなり楽しみですね。僕が振り付けをするわけではないんですが、この曲を聴くことで、勝手に身体が動いたり、物語が浮かんでくるんです。ストリートが好きな人や、ダンサーにかなり響く楽曲になるんじゃないかなと感じています。


――すでにパフォーマンスの振り付けは決まっているのでしょうか。
志村玲於:この曲はAkanenさんに担当してもらいました。自分たちのことをよく理解しつつも、ストリートに生きている方なので、対話をしながら作ることができるんです。
松村和哉:これは僕からリクエストを出させていただきました。ライブはダンスをメインにしたいなと思っていたので、この曲のコレオをそのままD Leagueに持っていけるのではというくらいの作品を作ってほしいと思っています。


――タイトル曲になる「Dark Heroes」についても教えてください。
ジャン海渡:今作を作るにあたり、コンセプチュアルにしたいということで、毅が“Dark Heroes”というテーマを出してくれたんです。それは楽曲の方向性を決める前の段階だったんですが、みんながそれに共感して、制作をはじめていきました。
松村和哉:今回、ジャンくんと僕のところだけリリックが空いた状態で渡されて、すでに書かれていた歌詞は抽象的な言葉が多かったので、自分は直接的な表現を足したいなと思い、うんざりしていることや良くない在り方などをぶった切りたいという想いで書きました。ネガティブな想いもしっかりと言葉にしています。
飯島颯:実際にこの曲のイントロだけでも、すごく世界観が強いですし、映画の世界に入るような感覚になれるんです。振り付けが入ることによってよりパワーが増すと思うので、いまからBLUEがどんな反応をしてくれるのかが楽しみです。
伊藤壮吾:先日、MVを撮影したんですが、僕たちも完成形がわからない撮影方法だったんです。外側から僕らを見ている映像になっていて。台の上に僕らがいて、その周りを高速でカメラが回りながら撮影をするという…。
志村玲於:伝わる⁉(笑)
伊藤壮吾:伝わると信じます(笑)。
ジャン海渡:監督がものすごくしっかりとビジョンが見えていて、僕たちはそれを信頼して動いていたので、すごく撮影しやすかったです。この曲の世界観をかなり素敵に表現してくれたので楽しみです。
[MV] SUPER★DRAGON / Dark Heroes
池田彪馬:この曲はビートメイクをしてくれた方が、Geek Kids Clubという、これまで「Welcome to my hell」と「Gong」を手掛けていただいた方だったので、SUPER★DRAGONがどこまで尖っていいのかということをしっかりとわかっているからこそ作れたのかなと思っています。
松村和哉:トラックもトレンドに左右されないドラムンベースになっていたので、今後もずっとカッコいいままの曲なんだろうなって思いました。
柴崎楽:イントロを聴いた時からワクワクが止まらない曲になっているんです。僕も映画はダークファンタジーが大好きなので、これからそんな物語が始まるような気になれるんですよね。踊っていてもつねに動いているので、BLUEさんの目が足りないという喜びの叫びを聞くのを楽しみにしています。
志村玲於:コレオも曲の世界観をものすごく表していますし、HIP HOPテイストも絶妙にミックスされているのでカッコいいんです。僕たちの正義を掲げている楽曲なので、いっぱいキャッチしてもらえたら嬉しいです!

リリース情報
関連リンク
関連商品